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「川は流れる」 方法論 その1.

2014年03月17日

「川は流れる」 方法論 その1の1.

やくろうの友人の “批評文学の方法”、あるいは、
“文学批評の方法” を、マネてみました。
彼には、とても、とても、及びもつきませんが、、、。

その方法とは、
1.まず、徹底した  同化。ーーと、そこからの
2.乖離、(再構築)  と、創造。ーー
というものです。

試みたのは、「川は流れる」 という、大昔、昭和36年の歌謡曲です。
やくろうは、小学生でしたし、
発売当時の歌に、重ねるような感慨は、何もありません。
でも、おぼろげに耳にして、なんとなく、心に、残っていました。
先日、藤圭子さんの不幸の記事を読んで、
そこから、藤さんも歌っていたそうだ、
でも、この歌は、怨歌じゃない。
そして、、三島由紀夫さんが大好きだった、とお聞きして、、、、
やくろうが、予備校に通っていた、
一時(いっとき)の、東京の思い出・・・御茶ノ水あたり、
が連想されたのでした。

9年後の昭和45年、その頃、コンビニもファーストフードの店も無く、
大都会でも、歓楽街から少し外れれば、
夜は、限られた人々の心細い明かりだけが、頼りの暗さでした。
EXPO’70 大阪万博;ウィキペディアより

ー1970年(昭和45年)、
EXPO’70 大阪万博の年です。ウィキペディアより。ー

わくらばの語趣に、選抜の意が含まれるのだ、と、思いました。
そして、その選抜の、不運なものが 、“わくらば(病葉)”。
中立~良さそうな結果なら、“わくらば(邂逅)に”、
生き過ぎた自虐なら、“老葉(わくらば)”と、呼ぶのだと、理解しました。

横井弘氏の歌詞はこのようなものです。
;「二木紘三のうた物語」からです。
http://duarbo.air-nifty.com/songs/2007/08/post_e2f8.html

そして、桜田誠一作曲、仲宗根美樹さんの歌声です。
https://youtu.be/3O5zNfaC7kI

「川は流れる」 方法論 その1の2.

2014年03月17日

わくらばを、季節はずれの朽ち葉=病葉と知るまで、
なんと救いのない、哀しい歌だろうと思っていました。
病葉とは、緑なす樹々の、あまたの葉から、不幸に染まり、
朽ち捨てられるよう選ばれてしまった、
たまさか の葉のことでした。

詞は、抗(あがら)え得ない病葉に、身の不幸を嘆じ、
振り返れば、不首尾に終わった思い出ばかり、
そして、
ゆく先の悲しみまでも、暗示させます。
「お伽話なんて、起こらないのよ、」と。

夕暮れあとの都会の残照です。
街の谷とは、この歌にそぐわないほど強い語感の言葉ですが、
落ちる病葉を受けとめる、ー狭い河岸と、急斜面の土と、木ー、、、
都会の力強い地形ですし、
橋の鉄(かね)骨の錆に、塗り込まれた時間を写すのも都会的です。

暗闇にうっすらと、両側のビルは、夜の帳のように林立し、
そこはかとなく洩れる、営みの薄明かりが、
“数十年前の大都会の川筋(生きる時間)”というものを、
見事に浮かび上がらせます。

でも、彼女はただ、冷たい世間を吹き抜ける、風に泣くだけではありません。
遠く紛れていく病葉を、遮(さえぎ)る黄昏の輝きを、心に通しています。
夢は、楽しいのよ。」、、、 と。
そして、「なんで、そうなるの?」という、
驚きのつぶやきで、閉じられます。、、、、、

三島由紀夫がこの歌を、殊に愛でておられたとか、、、、。
三島由紀夫は、きっと、この切ない憂いを、
世界史に翻弄(ほんろう)される日本と重ね合わせ、
健気に生きる真心こもった手弱女(たおやめ)ぶりに、
日本の源流のような感情を偲ばれたのでしょう。

-ー氏が追い求めた
「“ますらお” だけが、日本じゃない。」 と、、、。

三島由紀夫と石原慎太郎『三島由紀夫』;ウィキペディアより

予備校帰りの山手線で、
三島事件を知りました。

駅に着くと、人々がホームに飛び出し、
ドアが閉まると、手に手にかざした号外に、

満員近い車内の空気が、
ピタリと動かなくなったのを憶えています。

ー写真は、三島由紀夫と石原慎太郎『三島由紀夫』;ウィキペディアより、ー

御茶ノ水辺りには病院も多く、
不幸の宣告を受け止めようと、橋に立留まれる方もおられたことでしょう。
「どうして、私が?、、あの方が?」、、、
醸(かも)し出される病葉の想いも、今となれば納得の佇まいでした。

、、、人の生の哀しみが、夕暮れ時のほんの小一時間に、凝縮されます。
悠久の中、
ー川の流れ=決して巻き戻せない、人の命の時間ーに、
光と心が目盛となって、濃淡あふれるリズムを刻んでゆくのを感じさせます。

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